お知らせ 糖尿病かと心配な方へ
糖尿病は怖くない
最近糖尿病患者数が増加しつつあり、日本全国で1000万人超、40代以上の10人に1人が糖尿病と言われています。そしてその患者数は更に毎年増加しています。糖尿病が増え続けている理由は、糖尿病が現代病だからです。大昔、人類がマンモスなどの狩猟生活を送っていた時から、人は飢えと戦ってきました。その為血糖を上げるシステムだけが進化し、血糖を下げる必要が殆ど無かった為、血糖を下げるシステムは発達しませんでした。膵臓から分泌されるインスリンだけが血糖を下げる働きがあります。ところが、現代は飽食の時代となって、過食、運動不足、ストレス、アルコールの飲み過ぎが糖尿病の誘因となっています。外食産業の繁盛、車社会の繁栄、肥満の増加、ストレス社会など社会情勢の一角をみても糖尿病になる条件は充分にそろっています。また糖尿病は遺伝的要素が深く関与しているため、家族に糖尿病の人がいる場合は特に注意が必要です。どうして糖尿病が怖いかというと、気が付かない間に血糖が高い状態を放置してしまいやすいからです。これは、軽い糖尿病の間は何も症状が出ないためです。高血糖がひどくなって初めて、喉が渇く、尿が多い、食べても食べても体重が減ってくるといった症状が現れてきます。更に極めてひどい高血糖になれば昏睡状態に陥ることもあります。糖尿病で怖いのは、高血糖を放置していると様々な臓器に障害が起こってくるからです。特に糖尿病で侵されやすいのは神経と血管を中心とした臓器で、神経障害、網膜症、腎臓障害の3つの障害が起こりやすくこれを3大合併症と呼んでいます。それ以外で増えているのが脳梗塞や狭心症、心筋梗塞といった動脈硬化からくる合併症です。心筋梗塞は普通胸の痛みがあるのでそれと判りますが糖尿病患者の場合は典型的な症状が出ない事があります。
早朝空腹時の採血だけでははっきりと糖尿病と診断できないことがあります。確定診断には、ブドウ糖負荷試験という検査を受けます。この検査によって糖尿病なのか、正常なのか、或いはその境界型なのかと判ります。ただし随時血糖が200mg/dl以上である場合や事前に糖尿病合併症を持っていることが明らかな患者さんの場合はこの負荷試験を行う必要がありません。一般に健康な人では早朝空腹時の血糖は110mg/dl以下です。食後でも140mg/dlを超えることはあまりありません。糖尿病或いは境界型糖尿病の時はこれ以上の値になります。グリコヘモグロビンA1Cとはぶどう糖の結合している特殊なヘモグロビンの事ですがこのヘモグロビンA1Cは、過去1か月の血糖の状態とよく相関します。正常な値は5.9%以下ですが、糖尿病の場合この値が増加します。
糖尿病は自己管理が大切な病気であり、中途半端な知識や治療は、逆に怖い結果につながります。しっかりとした指導を受け、正しい治療を気長に続けることが肝要です。その為、初めて糖尿病と診断された方には教育入院をお勧めしています。糖尿病治療の基本は食事療法と運動療法です。食事や運動療法で血糖のコントロールがうまくいかない時に薬物療法を追加します。現在はいろいろの作用を持つ内服薬や注射薬があります。
この病気を理解し、自己コントロールの生活に徹していれば、糖尿病はさほど怖い病気ではないのです。半面、生活のコントロールを怠ったり、治療を軽んじたりすれば、将来に大きな差がでてきて、網膜症で失明したり、腎障害が悪化して人工透析を余儀なくされるといった事になってしまいます。